これまでフィトンチッドの持つ効果や生活への影響についていくつかの記事で紹介してきました。
動けない植物が自らを守るために発している物質がフィトンチッドです。
空気を綺麗にしたり、悪臭のもとになる有害な物質を浄化したり、様々な効果が注目されています。
この記事では、フィトンチッドの持つ嫌な臭いへの影響についてまとめていきたいと思います。
フィトンチッドは森のかおりの成分
森林浴の成分はフィトンチッド
フィトンチッドとは一言で説明すれば「森林の香り」です。森林の香りと言ってもピンと来ないかもしれませんが、わかりやすく想像するなら「木の香り」もそうです。
材木屋さんや、製材所、新築の木造住宅などで漂うあの木の香りや、銭湯のヒノキ風呂でするいい香り。たかが木の匂いかもしれませんが、わざわざ「フィトンチッド」とよばれ、その存在が注目されているのにはちゃんとした理由があるのです。
森林浴効果の秘密
皆さんも森林浴と聞くと「リラックス」「癒し」「マイナスイオン」など、ストレスを和らげたりリラックスできるイメージがあると思います。
一般的にこれらの癒し効果はまとめて森林浴効果と呼ばれています。
爽やかな空気の中で深呼吸してみると、何となく都会には無いような自然ならではの「香り」に気づくはずです。この香りの正体こそが「フィトンチッド」と呼ばれる揮発性物質で森林浴効果をもたらす張本人です。
森林の樹木が作り出して放出しているこの物質は「テルペン類」とよばれる有機化合物で構成されています。
フィトンチッドは体をリフレッシュするだけではなく抗菌、防虫、消臭などの様々な効果があり、フィトンチッドを上手に利用することで私たちの生活を健康的で豊かなものにすることが可能です。
森の香りについて
樹木は何のためにフィトンチッドを作り出すのでしょうか?
樹木が光合成をおこなうことは皆さんご存知だと思います。これは樹木が生きていくために必要な活動で、私たちが食事をとることと同じです。光合成は太陽の光エネルギーを利用して、炭酸ガス(二酸化炭素)や水から炭水化物を作り酸素を放出します。さらに樹木は二次的にフィトンチッドなどの成分を作り出します。
このフィトンチッドは作り出した樹木自身を守るための様々な機能が働きます
- 自分以外の他の植物の成長阻害作用。
- 昆虫や動物に葉や幹を食べられないための接触阻害作用
- 昆虫や微生物を忌避したり、病原菌などに感染しないようにする殺虫殺菌作用
などと実に多彩です。
植物は土に根差して生きていますので移動することができません。つまり、様々な外敵から逃げる手段を持っていません。その為「フィトンチッド」を作り出し発散することで自らの身を守るのです。1930年代、当時のソ連(ロシア)のトーキン博士がこの不思議な力を発見しフィトン(植物が)チッド(殺菌する)と名付けました。
生存するための様々な能力を生物は身につけています。
フィトンチッドは樹木にとっては自分の生命を守るための秘密兵器ともいえるでしょう。
この秘密兵器を持つからこそ、木は誰の力を借りることもなく数百年、数千年と生き続けることが可能だと言われています。
まさに生命の神秘ですね。
暮らしに森のかおりを取り入れる方法
輸送手段が発達した現代では産地直送の新鮮な食材が当たり前のように毎日の食卓に並び、食べきれなかったものは冷蔵庫に入れておけば保存もできます。
しかし昔は輸送手段も限られ、冷蔵庫などでの保管もできない時代には食べ物を保存することは大変困難でした。
魚介類や肉類はもちろんのこと、食品はそのまま放置しておくと「酸化」されて腐敗してしまいます。
食品は空気中の酸素と反応すると、過酸化物ができて分解されます。この現象がたべものの腐敗です。
ですので食べ物を保存するときは酸化しないようにすることが必要なわけです。
こうした食品の酸化を防止するために「フィトンチッド」は利用されてきました。
フィトンチッドには酸化を防ぐ力「抗酸化力」があります。
またフィトンチッドには微生物や病原菌に対する「殺菌力」もありますので、食品の保存には非常に有効的であったわけです。
昔の人たちはフィトンチッドの存在は知らないまでも、この「植物の不思議な力」に生活の中で気づき様々な形で活かしてきたわけです。
例えば腐敗しやすい「お寿司」を例に見てみましょう。
お寿司屋さんで握ったお寿司をのせる飯台には「ヒノキ」が使われています。ヒノキにはカンファー、α-ピネン、リモネン、カジノールなどのテルペン類が多く含まれておりこれらの相乗効果により抗菌作用が強く働きます。
寿司ネタを入れるケースの中には「サワラ(椹)」の葉が敷かれています。サワラには強い酸化防止力を持つピシフェリン酸が含まれます。お寿司に欠かせない「ワサビ」にはアリルイソチオシアネート、「ショウガ(ガリ)」にはゲラニルアセテートという成分が入っており、どちらも強力な抗菌作用があります。
最近は見かけなくなりましたが昔はお寿司を包むのにスギやヒノキの木を紙のように薄く削った「経木」が使われていました。
また郷土料理では「柿の葉」や「笹の葉」に包んだお寿司もあります。
抗菌力を持つ木の葉を天然のラップ代わりに使う先人の巧みな知恵で、腐敗しやすいお寿司の鮮度を保っていたことがよくわかりますね。
また、食べ物だけでなく私たちの住まいにもフィトンチッドは活かされています。
木造家屋が主流だった日本の住居では「総ヒバ造りの家には3年間蚊が入らない」などと言われてきました。家を建てる時にヒバやヒノキ、スギなどの木材を使うのはそれらの木が放出するフィトンチッドにシロアリやダニ、蚊などを寄せ付けない効果があるからなのです。家具を見てもタンスの中に入れておく「防虫剤」は昔は樟脳と呼ばれるものが主流でした。これはクスノキからとれるカンファーというフィトンチッド成分を主な原料としています。
クスノキで出来たタンスには防虫剤が要らないといわれるほど高い防虫効果を持っています。
科学的な裏付けで効果が証明されることにより、再びこの「フィトンチッド」を私たちの生活に役立てていきたいとフィトンチッドジャパンでは考えています。