『医学の父』として世界中に名を知られる古代ギリシャの医師「ヒポクラテス」は
『人間は誰でも体内に100人の名医を持つ』と言いました。
『100人の名医』とは何でしょう?
答えは「免疫力」です。
元々人間の身体には様々な病原菌やウィルス、異常細胞を排除する力が備わっています。この力が「免疫力」です。
免疫力が上手く働いているときは病気にはなりにくいのですが、何かの原因で弱まると様々な病気にかかりやすくなります。
この記事では、免疫力について詳しく紹介します。
免疫力とは?
皆さんご存知の「白血球」。白血球の中には免疫力を担う重要な細胞が存在しています。
分類するとこのようになっています。
さらにその役割はこのように分かれます。
異常細胞(がん細胞やウィルス細胞)に攻撃を仕掛ける「リンパ球」と呼ばれるものは大きく分けて、
- T細胞(70~80%)
- B細胞(5~10%)
- NK細胞(15~20%)
に分かれます。
T細胞やB細胞は「獲得免疫」と呼ばれ、過去に接触したことのある異常細胞(がん細胞やウィルス細胞)を見張り役の「マクロファージ」が見つけると攻撃指令を受けて攻撃します。
子供のころに打つワクチン注射は、この獲得免疫にウィルスを覚えさせる(わざと接触させる)ために打つわけです。
しかし、特殊なのがNK細胞。
NK細胞は体内に新しく発生した異常細胞(がん細胞やウィルス細胞)に対しても攻撃するのです。さらに常に体内をパトロールし、マクロファージの指令が無くても異常細胞を見つけ次第攻撃する能力を持っています。
この能力こそが他とは違う特徴的な点で「ナチュラル(自然に) キラー(殺す)」の頭文字をとってNK細胞(Natural Killer Cell)と呼ばれるゆえんです。
- 全く新しい異常細胞を判断し、攻撃する能力がある
- 攻撃指令が無くても異常細胞を発見次第いち早く自ら攻撃できる
という、非常に重要な役割を持ったNK細胞は「自然免疫」に分類されます。
NK細胞とは?
健康な人でも、身体の中では1日約5000個のがん細胞が発生しています。
それらのがん細胞を破壊するのがNK細胞です。NK細胞の働きが弱まると発生したがん細胞を殺しきれずに癌が発病します。また、癌が発病してからも手術や放射線などの治療効果を上げるためにはNK細胞の働きが大きく影響します
また、NK細胞は体外から侵入した病原性ウィルスによる「ウィルス感染細胞」に対しても攻撃をしかけます。
NK活性(NK細胞の元気度)の低い人は、風邪にかかりやすく治りにくく、感染症での死亡率が高いことがわかっています。
NK細胞はだいたい20歳をピークに加齢とともに活性度が下がり、
それによって病原性のウィルスやがん細胞に対する耐性が弱くなります。
さらに現代人は、このNK細胞の働きがどんどん弱まっていると言われています。
その原因として言われているのが環境の変化やストレスです。
日本における主要死因別死亡率において、悪性新生物(がん)は右上がりの動きをみせていて、昭和56年以来、第1位のままです。
平成22年の全死亡者に占める割合は29.5%となり、全死亡者のおよそ3人に1人は悪性新生物で死亡したことになります。
(厚生労働省「人口動態統計」より)
環境変化やストレスによるNK活性の低下への対策として
近年注目されているのが「森林浴」です。
このグラフはストレス状態を測る「唾液中コルチゾール濃度」に関するグラフです。都市部を歩行していた時はストレスが上昇しているのに比べ、森林部は変化がありません
こちらは森林浴前と二日間の森林浴後のNK活性を表したデータです。
森林浴によって活性値が一日で27%、2日で53%も増強される結果となりました。
2日間の森林浴でNK活性が1.5倍になった驚くべきデータです。
欧米諸国では「森林セラピー」として医療現場での活用が始まっており
行政や研究機関による協力体制が整えられています。
まとめ
いかがでしたか?
元々人間は病気を治す力を体の中にもっていて、それはどんな名医や薬よりも優れたものだと考えられています。
しかし現代人はその力が弱くなっていることで、昔は無かった病気が現代では増えているのも事実です。
ヒポクラテスは
『人は自然から遠ざかるほど病気に近づく』
とも残しています。
実際に自然から離れすぎた現代人の方が昔の人よりも様々な病気にかかりやすい事実を考えると、ヒポクラテスの残した言葉にも納得がいきます。
自然と免疫力にはとても深いつながりがあるのかもしれませんね。